政府機関文書管理担当者「災害対応セミナー」(PAROAボラカイ) |
政府機関文書管理担当者のための災害対応セミナー&ワークショップで講義
フィリピン・ボラカイ島で開催されたPAROA(PhilippineAssociation of Records Officers & Archivists)主催の「政府機関文書管理担当者のための災害対応セミナー&ワークショップ」において、初日に講義を行ってきた。
350名ほどの参加者で、会場は満員状態であった。
ボラカイ島について少し言及しておくと、最寄り空港
昨年2013年11月からのフィリピン巨大台風Yolandaの被災政府文書救済活動と、過去の事例として津波被害を受けたインドネシア・バンダ・アチェの16トンの土地登記簿救出・復旧作業および東日本大震災で海水をかぶった大船渡・気仙沼の土地登記簿の復旧作業を報告した。
被災後少しでも早く被災文書救済活動を開始し、「大型冷凍コンテナ」や「真空凍結乾燥機」が使えると、トン単位の膨大な水損政府文書も元の状態に近く復旧できることを技術的な側面から説明し、「被災の度に膨大な重要政府文書の廃棄、あきらめ」を繰り返すフィリピンの現状に、発想の転換と変革を促した。
残念ながら、フィリピン巨大台風被災地では、盲点のように「膨大な重要政府文書救出・復旧作業」が、国際社会の支援から抜け落ちていた。これは、日本のJICAなど国際支援機関、NGOなどの緊急調査団を含む構造的な問題点を示すこととなった。
被災地の法的基盤、法治国家の体制を維持する上で不可欠な政府重要文書であるが、救済技術を有する修復家の参画意識も低く、救出・復旧体制の強化・高度化はアメリカなどを除いて遅れている。特に、災害の多いアセアン諸国での被災政府文書救済体制は非常に遅れている。
事例経験多く国際的にトップレベルの支援能力のある日本であるが、今回、複数のフィリピン現地政府機関(裁判所、国家土地庁など)からSOSの正式救済要請文書を受けたJICA(国際協力機構)が、何のアクションも行なってこないことは奇異であり、被災地政府機関のSOSを受け止める感性を含めたアンテナ感度が低く、構造的欠陥をJICAは露呈しているのではなかろうか。
韓国政府の今回のフィリピン巨大台風被災地支援への感謝を、多くの未来を担うフィリピンの学生たちが各地で口々に話してくれたことと対比させると、従前型の支援対応に留まっているように思えるJICAの体質改善が必要な時期にきているのかもしれない
。
だが、日本国民にもJICAにも、今からでも、フィリピン被災現地機関のSOSを受け止めるアンテナを張って、被災地のリーガルな法的基盤を崩すことを「放置」から「支援し擁護する」方向に切り替えることは、可能であり間に合う。
折しも、日本のNHK取材クルーが、昨日21日から巨大台風被災地のタクロバンに入り、被災政府文書が被災地の法的基盤にどのような影響を及ぼすものであり、復興にどのような損失を与えるか、という観点から報道する予定と聞く。
実施を願っていたUNDPの被災政府文書(現用)の救済作業にCash for Work事業が適用されることが内諾され、緊急性から来る月曜日から開始と決まった。
UNDPからは、これまで「修復専門家が参画した被災文書救済事業はなかったことから、作業初日にUNDPスタッフ達も参加するオリエンテーションの開催を求められた。願ってもない機会なので快諾した。
これまでバラバラだったことが、やっと少しづつ「点から線に」変化し、広がってきたようだ。